Main Content

鍵師の仕事はカギのトラブルを解決することである

親友に頼まれて、彼の住む地域の祭りのようなイベントに参加した。彼が作った手づくりのストラックアウトに、子どもたちが集まるのだ。無料ゲームなので子どもたちは何度でも並ぶ。俺はそのゲームの進行役だ。休憩時間にタバコを吸っていると、いかにも悪ガキという言葉が似合いそうな、中学生ぐらいの坊主たちが3人。俺に話しかけてきた。俺の職業を教えろという。このルックスだから、普通のサラリーマンとは思われないのだろう。子どもたちが知っているかどうかわからなかったが、俺はそのまま、「鍵師」と答えてみた。すると、思いがけず、格好いいなどという讃嘆の声があがった。

興奮と憧れを含んだ目で俺を見て、今までどんな場所で仕事をしてきたのかとか、普段の仕事の服装はどんな感じなのか、3人で質問してくる。鍵師の仕事はただ、カギのトラブルを解決することである。恐らく坊主たちは、テレビドラマの影響か、俺の仕事を金庫破りか何かと間違えて想像しているのだろう。どんなに堅牢でセキュリティが厳しい金庫でも、ものの数分で開錠してしまい、中に入っている重要書類やフロッピーディスク、貴金属等を取り出して持ち去ってしまう、プロの窃盗。ただの泥棒だ。

でも面白いから、坊主たちの話に乗ってやることにした。そんなセンシティブな情報は、話せない。服装は黒系に決まっている。休憩時間が終わりになるまでのらりくらりと坊主たちの質問をかわし、かわせばかわすほど喜ぶ坊主たち。休憩時間が終わり親友が呼びに来たときには、俺たちが怪しげなノリで盛り上がっているので不思議そうな顔をしていた。

鍵師の仕事は泥棒とは正反対で、本当は人様の助けになる仕事だ。恐らく坊主たちだって、自宅の鍵や自転車の鍵。もう少し大きくなったら原付バイクの鍵などにお世話になるだろう。そんな身近に常にあり、トラブルが起これば本当に困ってしまう鍵のトラブルを、解消してあげるのが俺の仕事だ。